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国民の8割がかかる「歯周病」が認知症やがんに関連する理由〈週刊朝日〉

2019.01.25

国民の8割がかかる歯周病。近年、認知症との関連が注目されており、さらにはがんの手術前後にも口腔機能管理は重要だといわれています。「口から考える認知症」と題して各地でフォーラムを開催するNPO法人ハート・リング運動が講演内容を中心にまとめた書籍『「認知症が気になりだしたら、歯科にも行こう」は、なぜ?』では、歯周病と認知症、がんとの関連について紹介しています。東京医科歯科大学大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野教授の古屋純一歯科医師、同助教の中山玲奈歯科医師が解説します。

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 日本では65歳以上の4人に1人が認知症もしくは予備軍と言われています。また、歯周病に関しては人口の8割が罹患(りかん)していると言われています。どちらも身近な疾患であり、歯周病と認知症の関連について調査した報告は数多く存在します。この関連性については、二つの視点から調査が行われています。

 一つ目は、認知機能の低下により口腔衛生管理が困難となり、口腔の衛生状態が悪化する可能性です。先行研究によれば、認知機能の低下がみられない高齢者群と比較したところ、アルツハイマー型認知症(AD)患者のほうが、口腔の衛生状態は不良であるという報告があります。認知機能が低下することにより、自分で口腔衛生を保つことができなくなるだけでなく、本人以外が支援を行う際に抵抗を示すため、良好な口腔衛生を維持することが困難になり、歯周病が悪化するのです。

 二つ目は、歯周病原細菌に対する宿主の免疫応答により引き起こされる炎症性サイトカインの影響です。歯周病を有していると炎症性サイトカイン(TNF―α)の産生が増強され、歯周病原菌が産生する毒素とともに血流に拡散するため、血管の損傷を引き起こす可能性があります。それらがアミロイドβタンパク質やマクロファージによる炎症反応を引き起こし、神経細胞障害が生じることで、ADの症状を増悪させうると考えられています。

ある疫学研究によると、TNF―αの増加と歯周病原菌に対する抗体価の増加は、ADと関連する可能性があるとされています。実際に、AD患者の脳からは歯周病原菌が検出されているという報告もあります。また、定期的に歯科医院を受診し口腔衛生状態が良好であると、認知症の発症リスクが減少することも報告されています。さらに、別の疾患の治療のために非ステロイド性抗炎症薬を長期間にわたって服用している患者ではADの発症リスクが低いことも報告されています。

 以上のことから、慢性の炎症という観点から歯周病と認知症が関連する可能性は高いと考えられます。歯周病と認知症の因果関係についてはいまだ不明な点も多いですが、認知症患者に対し口腔衛生管理を行うことは推奨されます。

■がん周術期の口腔機能管理の重要性

 2014年時点で、生涯でがんに罹患する確率は男性62%(1.6人に1人)、女性47%(2.1人に1人)とされており、日本人の死因の第1位を占めています。このような背景から平成24年度診療報酬改定により「周術期口腔機能管理」が導入されました。

 これは、患者の入院前から退院後を含めた手術の前後の期間(周術期)に、歯科が包括的な口腔機能管理を行うものです。手術前に口腔機能管理計画を策定し、歯科治療を行うことで口腔衛生状態を良好にし、入院中は口腔粘膜炎の管理や術後の経口摂取に代表される口腔機能の管理を行い、退院後にも切れ目なく継続した口腔機能管理を行います。

 具体的には、口腔内の細菌数の減少(歯石やバイオフィルムの除去、ブラッシング指導)、感染源の除去(抜歯、う蝕(しょく)や不良補綴(ほてつ)物の治療)、治療に伴う副作用の説明(口腔粘膜炎など)で構成されています。

 平成30年度診療報酬改定では、地域包括ケアシステムの構築を推進するためにも、さらなる医科歯科連携を目的として、「周術期等」口腔機能管理となり、対象となる疾患が拡大されました。誤嚥性肺炎の予防や経口摂取の円滑な確立のために、さらなる連携が進められています。専門的な口腔衛生処置の評価も新設されました。

■術前の口腔ケアで肺炎のリスクが減少

 一般的に、がん手術直後や化学療法の加療中・加療後は、がん患者の体力が低下し、肺炎のリスクが高くなると言われています。術後肺炎の発症率は2.6%から3.5%程度とされ、肺炎の重症度と死亡率、入院日数について関連性があると言われています。

 術後肺炎の原因の一つとして、口腔内に常在する菌を含む唾液(だえき)を誤嚥(ごえん)することが挙げられます。したがって口腔衛生状態を良好に保つことが、肺炎のリスクを低減することにつながると考えられます。国内の大規模治療データを用いた報告によれば、歯科医によって術前から口腔ケアを行うことで術後肺炎の発症率と死亡率を有意に減少させることが示されています。

 また、食道がんや口腔がん患者に対する口腔ケアの効果についても報告があり、術後初期の炎症を減少させたり、術後肺炎の重症化を防ぐことが示されています。さらに、化学療法開始前に予防的に口腔ケアを受けていると、セルフケアしか行っていない群と比較して、術後の口腔粘膜炎のリスクが低減することも明らかになっています。

■術後のQOL向上にも有効

 このように、がん治療によって誘発される副作用や合併症の発症リスクを低減し、重症化を予防するために、術前からの口腔機能管理は重要です。それらのリスクを低減することができれば、平均在院日数が短縮し、治療の中断を防ぐことができ、投薬量を減量できるなど、間接的にも効果的であると言われています。

 また、早期からの経口摂取の再開にもつながることで、口から食べる楽しみを保ち、患者のQOL維持向上にも口腔機能管理は有効であると考えられます。

◯ふるや・じゅんいち
1972年埼玉県生まれ。東京医科歯科大学歯学部・大学院卒業後、岩手医科大学准教授を経て現職。専門は高齢者歯科学。入院患者の口腔機能管理、在宅訪問診療による摂食嚥下リハビリテーション・口腔ケア、認知症患者の口腔管理支援などを担当。

◯なかやま・れな
1989年東京都生まれ。東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科卒業後、2018年より現職。口腔機能や生活の質に関連した臨床・研究、口腔ケアに関する地域支援を行っている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190114-00000006-sasahi-hlth&p=3  より転載

 

比較的よくまとまっている記事なので。

 

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